
グローバル恐慌の真相 (集英社新書)
リーマン・ショックで金融資本を救った国家が次々、危機に瀕するという恐ろしい連鎖が始まった。グローバル化のデフレ圧力で中間層が破壊され、未来への投資が停止し、民衆とエリートの対立が深まる「冬の時代」。この長く続くであろう危機、大恐慌の足音の聞こえる時代を日本が生きぬくために必要なのは、過剰な流動性を生んだグローバル化の危うさと各国の社会構造の本質まで分析する「経済思想」だ。
『TPP亡国論』で論壇の寵児となった中野剛志と気鋭の経済思想家・柴山桂太が徹底的に危機の時代への処方箋を語りつくす!
<目次>
はじめに 壊れゆく世界を生きぬくために 中野剛志
第一章 グローバル化の罠に落ちたアメリカと世界
第二章 デフレで「未来」を手放す日本
第三章 格差と分裂で破綻する中国とEU
第四章 冬の時代のための経済ナショナリズム
おわりに 歴史は繰り返す 柴山桂太
<プロフィール>
中野剛志(なかの たけし)
一九七一年生まれ。京都大学大学院工学研究科准教授。東京大学教養学部(国際関係論)卒業。エディンバラ大学より博士号取得(社会科学)。経済産業省産業構造課課長補佐を経て現職。主な著書に『TPP亡国論』(集英社新書)など。
柴山桂太(しばやま けいた)
一九七四年生まれ。滋賀大学経済学部准教授。京都大学人間・環境学研究科博士課程単位取得退学。主な共著に『危機の思想』(NTT出版)など。グローバル恐慌の真相 (集英社新書)
最も参考になったカスタマーレビュー
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5つ星のうち 5.0 気鋭の研究者による健全な対談。 2011/12/18
By 博多ムーミン トップ50レビュアー
形式:新書|Amazon.co.jpで購入済み
『TPP亡国論』で“時の人”となった中野剛志氏(40歳)と3歳年下の柴山桂太氏の対談。
気鋭の若手研究者どうしの、真摯な問題意識が生き生きと伝わってきた。
経済には素人の私だが、「グローバル化」を論ずる前提となる「国際金融システム」の話
など、図式も含めて解説されており、全体的に分かりやすい内容となっている。
“亡国論”に続いて本書を読んでみたが、私自身が、中野氏の指摘する「これまでの通俗
観念」にとらわれていた一人であったことが明らかとなった。また、リーマン・ショック以
降の世界経済に漠然と不安感を抱いていたが、読み進むにつれ、世界がより重大で緊急性を
要する危機的な状況にあることを認識した。
特に、本書で知見を新たにできたのは「保護主義」の話。
「社会が市場メカニズムに破壊されないため」に「福祉国家やケインズ主義」が出てきて
「労働者」「環境」を守り、奴隷の取引や児童労働を防いできた、との「保護主義」の根拠
の話に共感を覚えた。
国際経済の話は、あまりに膨大すぎて「何が正しいか」を判断するのは困難であるが、本書
の議論が「何を大事にしているか」は十分に伝わってきた。そこには、等身大の人間の生活を
大切にしていこうとの健全な感覚があることを感じた。
いずれにせよ、TPPをはじめ、喫緊の問題を理解する上で、一読の価値があると思う。